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2013年6月15日(土)- 7月13日(土)

稲垣元則「427 Drawings」

稲垣にとってのドローイングとは
稲垣元則は長年にわたりドローイング、写真、映像の各メディアを用いて作品制作を続けてきました。昨年11月の当画廊の個展ではラージスケールの写真作品。今年4月に開催した名和晃平・ドットエス・稲垣によるセッションでは、稲垣の視点をライブ映像に置き換えてのパフォーマンスを行いました。
『わたしのドローイング1枚1枚には感情も物語もない。ただその存在がこれからの自分や多くの人やあらゆるものの感情や物語を反射するようなものになればいいと考えている。』 (「ドローイングにおける記録と編集」作家筆, Ripple 009, p.23, 2004年 より抜粋)と本人が語るように、稲垣の描く特異なドローイングに特定のイメージを喚起させるメッセージは見られません。しかし、だからこそ一時のブームや感傷には左右されない、長く響き続ける印象深さを見る人の心に宿してきました。
この6月、稲垣が20年以上にわたり描き続けてきたドローイングの軌跡を一堂にご覧いただきます。

427 Drawings
今展では過去から現在に至る数千枚にのぼるドローイングの中から427点を稲垣の視点でセレクト。イメージの選択、順番を編集し、ギャラリーの壁全面をB4サイズのドローイングで埋め尽くします。その展示では1点1点をじっくりと味わいながら、その背景にある膨大なエネルギーと時間をも感じ取ることが出来るでしょう。
長い年月の中で行きつ戻りつしながら描かれてきたその過程とともに、稲垣の今を知ることが出来る、かけがえのない展覧会となります。
時代に媚びることなく、自己を掘り下げ丹念に繰り返すことで生み出されてきた作品の数々を、ぜひともご高覧くださいますよう、宜しくお願い致します。


「稲垣元則:427 Drawings」によせて / ディレクター 林聡
2013年6月15日より7月13日まで開催の稲垣元則展では画廊の四方の壁いっぱいに B4サイズのドローイング427作を展示します。
これは何十年も毎日描き続けた作家の生き方と心の軌跡。
稲垣は年末に写真展も控えていますが、ドローイングは少し意味が違います。
一般にドローイングはスケッチ的な意味や本画に向かう為の習作というように使われます。
しかし僕にはやり直しなしの瞬発力の定着のように感じます。
それは時に激しく、時に静かに…
しかしそれらは迷子たちの模索ではなく、 間違いなくどこかへ行くための地図のようなものです。

猿や象の描いた絵はもちろん美しいのですが、それ以上にはなれない。


[Artist's Statement : 稲垣元則]
これらのドローイングは、21年間同じ大きさの紙に描き続けてきた多くのドローイングの中からセレクトしたものです。
最初の一枚を描いた時、そこに自分のことばを見つけたと感じ、それ以来自分の一番信頼できることばであり続けています。

最新の一枚の絵は、それまでのドローイングすべての蓄積であり、ある意味21年間かけて描いたものだといえます。
そして最初の一枚は、いままでの時間をかけて価値付けされてきたものです。
この薄い紙の絵はどちらも時間の重厚さと複雑さを孕んでいるのではないかと思います。

絵を描くことはすごく簡単なはずであり、同時にとてつもなく難しいことだということを強く教えてくれるものです。