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2017年9月30日(土) - 10月28日(土)

今村源 Hajime Imamura
ヒカリにかえる Return to the light

6年ぶりとなる今村源のノマル個展!
カラフルな色が混じり合い、光に還元された先にある風景


普段、気にも留めないありふれたものに、少しの隙間を加える、あるいは天地を入れ替えたり裏返したり。一見するとユーモラスな造形が多いが、心静かに対面すると、その軽く透明感のあるイメージから一転、日常と表裏一体にある深遠な世界が観る人の眼前に広がってくるー。

いずれにも寄らない独自の哲学的作風で早くから注目を集め、多方面から多くの支持を得ている、関西、そして日本を代表する現代美術作家の一人、今村源。
ギャラリーノマルでは2011年以来、実に6年振りとなる個展を開催いたします。


カラーワイヤーで紡ぎ出す、見える世界/見えない世界
今村は、2016年の夏から秋にかけて、美術家・三嶽伊紗氏とともに徳島県立近代美術館ギャラリーで知的障害者とのワークショップと展覧会(「この惑星に生まれて 今村源+三嶽伊紗+アート・メッセンジャー in シーズ」)を行いました。ワークショップで参加者たちと共に多色のカラーワイヤーを用いて制作した造形物は、展示室内に張り巡らされた針金に吊るされ、そこに小さな宇宙が現出しました。
今村がその時の交流で得た経験や考察が、今展でのテーマへと結びついています。

カラーワイヤーの複数の色は混じり合うことでグレーに向かい、それは今村のニュートラルな世界の捉え方を表します。今回の展示でもカラーワイヤーを使用し、天と地を入れ替えた想定での、ギャラリー空間全体を使ったインスタレーションとなる予定です。逆さまとなった世界で私達に何が見えてくるでしょうか?

今展では初の試みとなるカラーワイヤーを素材とした平面作品や、版画にも挑戦。見ていて楽しく、また、そのコンセプトに触れることで深遠な世界の有り様を垣間見させてくれる、今村源の新作展となります。


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ヒカリにかえる ー 今村源
 近年、障害者とのワークショップの機会があり、モノづくりの立場から関わっていく中で、ある一つの仮説に取り憑かれている。それはこの方々は流れているのだと。まるで走っている時や、自転車に乗っている時の感覚のように流れの中にいると。決して落ち着きがなく動き回っているという意味ではない。誰かに呼び止められてもすぐには答えることはできず、一瞬の目視で留まらない。周りがどんどん流れてるのだから何が呼び止めているかを同定するのも一苦労だ。
 絵を描けば、絵という一枚の画面に収めるという枠に留まらず延々続いていく、あるいは一瞬の高速シャッターのような瞬間を切り取るような視線がやっと。その時々の流れやその響きの大小によっていろいろな方向に流れていく。この流れそのものを楽しんでいる?これはもしかすると世界を我々が音楽を聴くように感じ取っているのではないのか。だとするとそれを止めることがなんと滑稽なことか。それは音楽を一音一音聞いているようなものなのだから。
 思えば我々は五感で感じ取っている。いやそれ以上の響きが体を通して常に流れ、響いているはずだ。それをこの私はせっせとせき止め、固定しながら世界を構築することに躍起になっているのかもしれない。音楽を聴くように世界を捉える。かつて浸っていたかのように思えるこの場所に帰っていくことができるのだろうか。

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今村源の生態系 ー 島敦彦 (金沢21世紀美術館館長)
25年前の1992年、今村源と初めて会った。今は亡き中村敬冶さんと一緒に、1980年代日本の彫刻を振り返る特別展「彫刻の遠心力―この十年の展開」を国立国際美術館で準備していた時のことだ。中村さんは、中原浩大や石原友明と並んで、今村源の名前を真っ先に挙げた。当時、戸谷成雄や遠藤利克ら、重厚で存在感のある、いわば求心的な彫刻がもっぱら注目を集めていたが、それとは対照的に従来の彫刻観を遠心的に拡張する傾向も顕著に見られ、そこにあえて焦点を当てたのである。出品者は、今村、中原、石原の他、久保田成子、寺内曜子、中ハシ克シゲ、内藤礼、高柳恵里など、実に異色の人選となった。

「展示は自分でやるので構わなくていい」と言う、今村の飄々とした人となりにいささか戸惑いつつ、軽くて自在、風通しがよく、干渉しあうことのない作品群にも驚かされた。それは今も変わらない。もっとも、作品相互には緩やかな結びつきがあり、独自の秩序がその空間を支配する。それは、まるで一つの生態系を形成しているようにも見える。つまり、個々の作品はそれぞれ与えられた役回りがあり、そのどれを欠いても環境が成立しない絶妙なバランスの中に生息しているのである。それは、今村が、進化論や生物学、あるいは菌類やキノコ、冬虫夏草に以前から深い関心を寄せてきたことと無縁ではない。

ギャラリーノマルでは6年ぶりの個展となる今回は、カラーワイヤーを使った展示に挑戦すると聞いている。きっかけは、2016年に徳島県立近代美術館で知的障害者とともに行われたワークショップと展覧会「今村源+三嶽伊紗+アート・メッセンジャー in シーズ」である。今村は針金の先生となって、参加者とともに、カラフルなワイヤーによる、生き物のような、植物のような、あるいは何とも名状しがたい、さまざまな針金の絡まりを生み出し、天井に太いワイヤーを張り巡らせて、思い思いの位置に取り付けたという。

徳島での経験は、今村の作り手としての立場を揺さぶったようだ。今村が個展に寄せた言葉によれば、それは「音楽を聴くように世界を捉える」仲間たちの感覚や態度への憧憬、あるいはかつては誰もが持っていたはずの記憶を呼び覚ますものであったのかもしれない。個展の副題が「ヒカリにかえる」である。生まれて初めて見た光に立ち返ることなのだろうか。いろいろと想像しながら、久しぶりの個展を楽しみたい。