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2018.5.26 sat - 6.23 sat

稲垣元則 Motonori Inagaki
象 elephant

稲垣元則・初の作品集出版記念展
不確かな未来を手繰り寄せる絶え間ない探索と確認


四半世紀に渡り常に変わらぬ姿勢で自己・社会と対峙し、写真や映像、ドローイング等のメディアを用いて作品を制作する作家・稲垣元則。具体的なイメージを喚起させない稲垣の作品は、見る人の意識の中にゆっくりと、深く強い"言葉にならない何か"を刻みつけます。

初の作品集「elephant」の出版に合わせ、
自身の制作を再認識する展覧会

稲垣は90年代初頭よりB4サイズのコピー用紙にドローイングをすることを継続的に続け、その数は現在で1万点以上に及びます。現象や心象を描くのではなく、まだ見ぬ何かを捉えようとする稲垣のドローイングは、制作の時間軸を超えて相互に影響し合い、その全体で一つの作品と言えるかもしれません。初の出版となる今回の作品集では、彼の制作の根幹にあるドローイング作品より制作年代によらず100点をセレクト。写真作品10点と合わせ計236ページのボリュームとなる予定です。
寄稿文は長く稲垣作品を見続けてこられた加須屋明子氏(京都市立芸術大学教授)に依頼。一見では捉えがたい稲垣作品の本質を丁寧に紐解きます。

今展では、作品集に掲載する10点の写真作品を大型プリントし、その上に直接ドローイングする新作と、同じく作品集掲載のドローイング全100点を展示予定。
展覧会のタイトルとして使われている漢字「象」には、動物の象のイメージから派生して、「かたち」「かたどる」などの意味も持ちます。稲垣は当初よりドローイングのタイトルを"untitled"としていますが、今回、長年に渡り稲垣が続ける、名づけ得ぬものをかたどるような制作の行為を再編し、そこから意味を見出すだけでなく、現時点での作品や作品集づくりから過去/未来を照射する試みとなります。

常に真摯な態度で長年繰り返してきた制作の中から確かなメッセージを発信し続ける作家、稲垣元則の新作展と初の作品集出版。是非ともご注目くださいますよう、よろしくお願いいたします。


作家コメント
ドローイングを描き始めたのは1992年、20歳の時でした。
以降、私は同じ大きさの紙に繰り返し絵を描いています。繰り返すことには大きな意味があります。

これらの絵は連鎖しているのではなく、常に描き直されているのです。
新しい一枚を描くことは前の絵を新たに描き直しているのではなく、それまでの全ての絵の意味や価値を描き直しているのです。

"最新の一枚の絵は、それまでのドローイングすべての蓄積であり、ある意味21年間かけて描いたものだといえます。
そして最初の一枚は、いままでの時間をかけて価値付けされてきたものです。
この薄い紙の絵はどちらも時間の重厚さと複雑さを孕んでいるのではないかと思います。"
(2013年)

今回出版する作品集で試みていることは、過去の時間や価値を変容させるということです。
ドローイングの編集は、時系列で並んでいるわけではなく、時間に関係のない関連性で展開しています。
そうすることで具体的に、ドローイングの価値や意味を描き直しています。

展示では作品集に掲載する写真をインジェットでプリント出力した上にドローイングをします。
写真の上にドローイングすることは、写真と絵とを等価に扱い、作品との関係を1+1=1にしなければなりません。
作品集でのドローイングと写真の関係を、違うかたちの踏み込み方での作業です。

稲垣元則