過去の展覧会

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2003.4.5 sat - 4.25 sat

Nomart Projects #02_06
谷本良子 Ryoko Tanimoto
もの影ドローイング
  • オープニング・パーティー 2003.4.5 (三宅砂織展と合同開催) sat sat 17:00 -



2003年2月8日からスタートしたNomart Projects#2の前半6回目、大学では染織を専攻していた谷本良子のLOFTでの個展 (三宅砂織展と同時開催)。
丈が異常に長すぎるコートやズボン、ワンピース、あるいは毛むくじゃらの羽織物のような作品が天井、梁、壁から吊るされ、壁面には50点以上のドローイングが展示されました。

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ノマルエディションの若手作家の発掘・育成プログラムとして2001年にスタートした「NomartProjects」。その第2弾として、今回は三脇康生氏(美術評論家, 精神科医)をキュレーターに迎え、ノマルエディション/プロジェクト・スペースのCUBEとLOFTの2会場において春に6人、夏に4人、計10人の若手作家の個展を開催。


前回#1ではグループ展+個展という形態でしたが、今回のプログラムは10作家、すべて個展での展覧会となりました。

各個展の狙いは、ある程度表現を持続させてきた若手作家が、いかに表現を見直し、展開させるのか、それを考察する瞬間につき合い、見守る─ノマルエディションが工房 (制作)・ギャラリー (発表)の場を与え、批評家としての三脇氏の用意する言葉を参照してもらう─ことにありました。

それぞれの作家のステートメントも伴いつつ、個展の度に企画者である三脇氏が文章を執筆し、発表されました。


[Nomart Projects#2 参加作家]
[前半]
中比良真子 Masako Nakahira / みやじけいこ Keiko Miyaji
村井美々 Mimi Murai / 馬場晋作 Shinsaku Baba
三宅砂織 Saori Miyake / 谷本良子 Ryoko Tanimoto
[後半]
梅木香里 Kaori Umeki / 児玉太一 Taichi Kodama
衣川泰典 Yasunori Kinukawa / 中西信洋 Nobuhiro Nakanishi



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作家コメント

私がかつて好んでいた小説や歌、そこには共通して、平穏な日々の日常生活と紙一重に存在する、リアルに描かれた幻想の世界がありました。

私は大学に入学し、子供の頃から親しみを感じてきていた布を扱える染織を専攻しました。
染色や織りといった経験は、そのいろいろな素材や布地、その行為自体が、しだいに頭の中で私が想像していた幻想の世界とリンクしていきました。
その後、私はその世界をビジュアル物として作ろうと試みはじめ、その中で私がよく使用した素材やモチーフは羊でした。そして、頻繁に羊毛やその他の獣毛素材に触れ様々な物を制作する事は、私の毛に対する感覚を数年の間に変化させました。
たとえば、今まで目にしていたマフラーやコートといった羊毛製品は、製品のために矯正された獣毛のように写りはじめたり、その素材の組織やその毛羽だった表面は以前より一層強調されて、時にそれはそのものの中に潜む恐怖感やせつなさというような、感覚を呼び起こしはじめたりし、しばらく私はそういった感覚を表現としてきました。

そして、しばらくの時間がたち、私はテキスタイル関係の仕事に就くことにしました。そこでの私の仕事の一つは、布のための柄に送りをつける事や終わりなく続く大量の布地を一つ一つ整理していくという仕事で、1日内の多くの時間をそうした行為で過ごすようになりました。
そのことは、また違った側面でモノの見え方を変化させるきっかけになりました。
布地の柄や組織は強調され、それはそれぞれ永遠に続く世界の一片になったのです。
日常の中で目にする様々な布の製品は、私にはそれ自体がそのモノの違う側面への入り口なのです。

私にとって特に布地やそれらに実際に関わる行為はそのモノの表層や用途のほかに幾通りもの真実の揺らぎを発見させてくれます。
そして、私の作品はそのモノの揺らぎを表現しようとする試みなのです。

谷本良子 Ryoko Tanimoto


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ー 三脇康生より谷本良子へ

インスタレーションの中におけるドローイングの位置について

もともとドローイングの好きだった谷本がなぜ大学で染色のコースに入ったのか。
いわゆるファイバーアートというメディアがやりたかった訳ではない。白い紙にアーティスト気取りでなにかを描くことよりももっと根底から構築する行為が欲しかった、という辺りが正解だと本人も言っている。ここから「絵を壁に架けることが服をハンガーに架けることに等しくなる」と軽く一行書くことが、どのくらいの大きな問題を含んでいるのか考えることへと当然歩みだすことになる。
もちろん美的生活を谷本の作品が称揚している訳ではないから、服を作品にする仕掛けとして、いくつかの強調点=生活からの逸脱点を置くことになる。1、人間が着こなすことができる服の長さからの逸脱。2、「冬支度のためにマフラーを編む。ふと出来上がったマフラーを見ていると、それはマフラーの形へ矯正されたかのような獣毛であるかのように映り始めた。」と谷本は言うが、そのような毛の動物性の強調。(人間の世界の方へ、人間の感覚の方へおめでたく折り曲げられた素材を、逆に折り返すこと。この世のすべての人間化された毛を、動物性のほうへ折り返すこと。そのようなオブセッション。)
今回ノマルプロジェクトで谷本に要求したのは「ドローイングの復活」である。現在のところ、ドローイングの位置づけとしては以下の二つがあり得る。1、以上のような「服」作品のアイディアスケッチ。2、「服」の模様付けの手段。1は良いだろう。インスタレーションの際には、ドローイングのセンスが効くはずだ。2はどうだろうか。ドローイングが模様になれば、「服」はやたらに長い、あるいは毛むくじゃらのキャンバスに戻ってしまうのではないか。とすれば、ドローイングは徹底的に模様化から外され続けねばならない。
「絵を壁に架けることが服をハンガーに架けることに等しくなる」という問題の考察を中心に据えるためにも、一度ドローイングを中心に制作を見直せばどうだろうか。取っ掛かりのドローイングという立脚点こそを、今、考察することが、単純な生活への回帰や、ひねくれた形での美術への回帰を未然に防ぐだろう。
今回は、徹底的に模様化から逸脱し続けるドローイングと長すぎる「服」を併置し、「服」を作り出すアイディアスケッチとしてのドローイングの周りに、敢えてまるで服のように架けられた「服」を置く。

三脇康生 Yasuo Miwaki


今展キュレーター: 三脇康生 Yasuo Miwaki

1963年生
京都大学文学部美学美術史専攻、卒
京都大学医学部、卒
フランス政府給費留学生としてパリ第一大学科学哲学科博士課程留学後、京都大学大学院医学研究科博士課程、修了

[専攻]
美術批評、臨床精神医学、精神医学の倫理・歴史・哲学
[著作]
「精神の管理社会をどう超えるか?」(松藾社)
「ア−ト×セラピー潮流」(フィルムアート社)
「ナルシシスムを静かに破壊せよ」(ノマルエデション) 他