過去の展覧会

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2003.9.6 sat - 9.26 sat

Nomart Projects #02_09
衣川泰典 Yasunori Kinukawa
transparent space
  • レクチャー (三脇康生 x Nomart Projects #2 後半メンバー) 2003.9.6 sat 15:00 -

  • オープニング・パーティー (中西信洋展と合同開催) 2003.9.6 sat 17:00 -



2003年2月8日からスタートしたNomart Projects#2の最終回、衣川泰典のノマルでの個展 (中西信洋展と同時開催)。
インクジェットプリントとシルクスクリーンプリントの技法による、色彩鮮やかで自由さと緊張感が画中で均衡した大小の新作平面作品を、スクエアなホワイトキューブの空間「CUBE」で発表しました。

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ノマルエディションの若手作家の発掘・育成プログラムとして2001年にスタートした「NomartProjects」。その第2弾として、今回は三脇康生氏(美術評論家, 精神科医)をキュレーターに迎え、ノマルエディション/プロジェクト・スペースのCUBEとLOFTの2会場において春に6人、夏に4人、計10人の若手作家の個展を開催。


前回#1ではグループ展+個展という形態でしたが、今回のプログラムは10作家、すべて個展での展覧会となりました。

各個展の狙いは、ある程度表現を持続させてきた若手作家が、いかに表現を見直し、展開させるのか、それを考察する瞬間につき合い、見守る─ノマルエディションが工房 (制作)・ギャラリー (発表)の場を与え、批評家としての三脇氏の用意する言葉を参照してもらう─ことにありました。

それぞれの作家のステートメントも伴いつつ、個展の度に企画者である三脇氏が文章を執筆し、発表されました。


[Nomart Projects#2 参加作家]
[前半]
中比良真子 Masako Nakahira / みやじけいこ Keiko Miyaji
村井美々 Mimi Murai / 馬場晋作 Shinsaku Baba
三宅砂織 Saori Miyake / 谷本良子 Ryoko Tanimoto
[後半]
梅木香里 Kaori Umeki / 児玉太一 Taichi Kodama
衣川泰典 Yasunori Kinukawa / 中西信洋 Nobuhiro Nakanishi



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作家コメント

私は街の中にあるポスターやチラシが貼られラッカースプレーで落描きされた壁から作品のヒントを得ている。ラッカースプレーのグラフィティは何も考えては描かれていないだろう。でも、そこには壁の上に、描き消すように描かれた反抗的な姿勢と自分の存在を主張するような線、自由を謳歌する姿がチラッとみえるような気がする。それらの要因がとても純粋なものに見え、決して哲学的な意味はないだろうが、私をグッと惹きつける原因だと思う。
街の壁と限定するのではなく私の中に存在する透明な空間に自由に線を描ければ、どれだけ心地いいのだろうと想像を膨らましてしまう。

衣川泰典 Yasunori Kinukawa


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ー 三脇康生より衣川泰典へ

フォーマリスティックな落書きは可能か

衣川のリトグラフは、色彩も鮮やかな爽やかな画面が印象的で、ノマルエディションで持続される執拗な自己分析作業としての展覧会に、誘う必要もなく、そのまま行ってもらえば、ある程度は市場でも使える作品となり得ていたかも知れない。しかし衣川は、かわいい鮮やかな作品を作らない作家 (大竹伸朗やMimmo Rotella)への賞讃を隠さないのであって、それならば、それらの賞讃にふたをして作品をまとめることを停止することを、要請した。街角に貼られたポスター、剥がされその上に張り付けられ、堆積感が発生している。ここに落書きできたら、キャンバスが街角自体になって、なんだか爽快かもしれない。このような60年代乗りを衣川は持っていたのである。しかしそれをそのまま反復しても仕方ないとも思っていた。そんなワイルドな感覚に憧れながらも、キャンバスの中の仕事に戻る。すると落書きは、とたんに画面をまとめさせる筆致に変化し、フォーマリステックな要素へと変化する。この変化に責任を持とうではないか、衣川なりに。というのが今回の要請である。現在の作品において画面の質を画定するのは、街角を撮った写真のある程度ぼかされた断片であるが、もはや何が撮られたのかは不明である。これらの断片は、むしろ色であるとか、ぼけ具合で、ある種の遠近感を引き受けている。散らばる映像の断片が、散らばるために用意した想像上の平面へ、落書きすること。とりあえず、そのように衣川の今の作品をまとめることができる。しかしながら反芸術とフォーマルを足して2で割っても、誰も賞讃しないだろう。要は、いかなる落書きの喜びを、いかなる想像上の平面で堪能するかという、もっともっと個人化されてよい構えこそが重要なのだと思う。

三脇康生 Yasuo Miwaki


今展キュレーター: 三脇康生 Yasuo Miwaki

1963年生
京都大学文学部美学美術史専攻、卒
京都大学医学部、卒
フランス政府給費留学生としてパリ第一大学科学哲学科博士課程留学後、京都大学大学院医学研究科博士課程、修了

[専攻]
美術批評、臨床精神医学、精神医学の倫理・歴史・哲学
[著作]
「精神の管理社会をどう超えるか?」(松藾社)
「ア−ト×セラピー潮流」(フィルムアート社)
「ナルシシスムを静かに破壊せよ」(ノマルエデション) 他