過去の展覧会

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2005.7.16 sat - 8.6 sat

Nomart Projects #03_02
木村真由美 Mayumi Kimura
She+
  • ギャラリー・トーク:木村真由美 x 池上司 (西宮市大谷記念美術館) 2005.7.16 sat 18:30 -



ノマルエディションの若手作家の発掘・育成プログラムとして2001年にスタートした「Nomart Projects」。その第3弾となる今回は、池上司氏 (西宮市大谷記念美術館学芸員)をキュレーターに迎え、大西伸明と木村真由美の個展をそれぞれ開催しました。

「仮美人草」、「イカした女」など一風変わったタイトルが付けられた木村の一連の作品は、本来ウエディングケーキの上に乗っているドレス姿の人形が、様々なシチュエーションの設定のもとに変身した姿を写真におさめています。今展ではこの他に、果物や野菜を用い、女性のイメージを再現した新作のもあわせて展示されました。

ニューヨークで活動していた経歴を持つ木村真由美の、国内では初のまとまったヴォリュームでの展示となりました。


[若手作家の発掘・育成プログラム「Nomart Projects」について]
第1回目の2001年は、キュレーターとして評論家の清水穣氏を迎え、4つのテーマによる4本のグループ展と4つの個展を開催しました。
第2回のプログラムでは、評論家の三脇康生氏選定による10人の作家による個展を開催。今回の第3回以降も2年毎の開催を予定しています。



キュレーター・コメント

愛憎、相半ばするもの

 「C+」と言えば成績表ではぎりぎり合格ということであるが、「She+」あるいは「He+」といった場合にはどうであるか。プチ整形や肉体改造ということばが当たり前のように聞かれる昨今、ぎりぎりセーフなのかアウトなのか、その判断は個々人によって大きく異なるだろう。しかし木村真由美の作品が問うているのは、そうしたモラル的な判断の基準ではない。
 なりたい自分になる、今の私に足りないもの、といった扇情的かつ脅迫的なキャッチコピーがするどく人の心に突きつけるのは、多くの場合、理想主義的は自己探求ではなく、人からこう見られる自分でありたい、というきわめて他者依存的な、浮薄な欲求である。しかし私たちは、そうした欲求を手放しで寄せつけないほど強く生きているわけではない。つい占いや性格判断に手を出してしまったり、思いがけず人から好意的な意見を投げかけられたりすると、感情が揺れ動き、今の自分をしばし見つめ直してしまうこともある。あるいは逆に、常日頃コンプレックスに感じていることや、鼻紋に感じていることをあらためて指摘されると、傷ついて落ち込んでしまったりもする。
 木村真由美の作品に写し出されているのは、そうしたきわめてリアルな自分自身に対する感情と行動の数々である。あるものは誇張され、またあるものはシニカルなオブラートに包まれて、私たちの目の前に提示される。哀しくも、笑うしかないその状況は、あくまでフィクションであると知りつつも、心の奥底に深く沈殿していくような、後味の悪さを含んでいる。たんなる自分探しやジェンダーの問題だけではすくいとることのできない、複雑で繊細な心理描写がそこにはある。
 今回の個展では、いずれも数十点のシリーズとして展開されているデビュー作と新作のなかから、約40点を厳選して展示する予定である。毒もあり、愛もある、良質の人間喜劇の一幕を、ぜひこの機会にご覧いただければ幸いである。

池上司 Tsukasa Ikegami (西宮市大谷記念美術館 学芸員)