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2012年4月7日(土)- 5月12日(土)

田中朝子 展「on a table / in a book」

日々の生活の中での些細な錯覚(ズレ)を独自の視点から切り取り、繊細に、また大胆な発想で形へと置き換えていく作家、田中朝子。
写真・版画・立体など多様な手段で表現される彼女の作品では、一見ユーモラスでありながら、現代における視覚の純粋性と不確かさを浮き彫りにすることが試みられています。

今展では「見る」と言う行為をより鮮明にするために、テーマによって会期を2回に分けて開催しています。
前半は「日常」をテーマとした写真展(「on a table」〜4月20日迄)、後半は「イメージ」をテーマとした版画展(「in a book」)とし、2つの展覧会を通して、見ることや認識の所在を深く掘り下げた田中朝子の世界観をご堪能ただきます。

Artist's Statemant

on a table
ここの、「table」とは「日常」のシンボルの様なものです。
もう少し厳密にいうと、それらが生まれる場所の、です。
私の写真のほとんどは「日常」が素材となっています。と言っても「日常」をストレートに扱うのではなく少しズレていて、それに対しての些細な錯覚、思い違いから着想を得る事が多い様です。例えば夜空を見上げると、三日月がブレてバナナの房に見えたりします。まな板の上で捌かれた魚のお腹から出て来た小魚を、その魚の子と思い込み、しんみりしてしまったりします。レタスの葉っぱを剥いていて、ころんと転がった葉っぱが、何かを大事そうに掴んだ手に見えたりします・・・そんなズレた視点で、言ってみれば見立てられた「日常」は、半ばフィクション、「物語」です。
なぜかそれに惹かれ、それを留めるべく、白い背景にモノを出演させて撮影し、プリントされた短い短い物語に、タイトルを付けて私の作業は終わり、再びズレた視線を投げかけます。
私の写真は、「日常」というより、日常という「物語」の再現なのかも知れません。

in a book
 この、「book」とは「イメージ」のシンボルの様なものです。
もう少し厳密にいうと、それらが生まれる場所の、です。
モノには人それぞれに、なんとなく定番の「イメージ」があります。例えば「リンゴ」だったら私の場合、「左右対称の、上部がぷっくりした丸い真っ赤な塊で、上に葉っぱが付いている」・・・というイメージです。でも実際のリンゴは大抵左右対称ではなく、葉っぱなんかまずなくて、真っ赤とも言い難く、時に打ち身があったりもします。でも本の中、つまり頭の中の「イメージ」では、あのリンゴなのです。また「正岡子規」と言えば殆どの人にあの顔が浮かぶでしょう。

こんな風に「イメージ」は、実際にそれを見ていても見ていなくても、見ていたとしてもしっかりとは見ていなくても、言わば記号化されていて、結構まことしやかに頭の中で君臨していたりするものです。そしてそれは意外と現実から結構な距離があったりして、その距離に私はよく翻弄されてしまいます。
しかし今回、そんな距離を孕んだ私なりの「イメージ」を、同じく距離という要素を孕んだ版画を通して、遊ぼうと思います。

田中朝子