仕事のなかの曖昧な不安00000池上司

 大西伸明の作品の魅力は、率直にいって、何ものなのかよく分からない気持ち悪さにあると思う。 そこにひとつの見方を提示するのが、今回の個展のコンセプトであると考えている。
「infinity gray」というタイトルで制作され続けているシリーズは、身のまわりにある品々を、 主にシリコンで型取りして樹脂成形したものである。 さらに手作業で色や質感を再現しながら、一部が透明のまま残されている。 これがイミテーションを目的としたものであるならば、そもそもこのような手間暇のかかる作り方はしないだろうし、 世の中には格段に精巧なものがあふれている。
これらの作品を見て感じるのは、そのかたちや大きさ、色や質感といった要素が、 すべて表面的で視覚的な情報の集合として扱われているのではないかということだ。 そのあり方は、昨今よく目にする3DCGにも通じるものがある。
 以前、広告や映画など一線で活躍するCGクリエイターの方の話を聞く機会があった。 そのなかで最も印象に残っているのは、CGは一見きわめてリアルなようであるが、実写(フィルム)に比べると、 その情報量は圧倒的に少ない、ということばであった。それはセルや紙に描かれたものではなく、実写の映像とも異なる、 また別の、新しいものとして認識しなければならないということを意味している。しかしそれをどのように受け入れたらいいのか、 また制作する側も、その技術をどのように利用したらいいのか、そうした表現としての共通の約束事はいまだ確立されていない。
大西伸明の作品を見たときに感じる不安と、3DCGのアニメーションを見たときに感じる何ともいえない違和感は、 本質的に似通った部分があるのではないか。
 そこで今回の展示では、大西伸明が自らの手法に鑑みて集めてきた品々を、いわゆる博物館的な手法を用いて、 ごく簡単なルールに基づいて、できるだけたくさん並べてみることにした。そこから何が見えてくるのか、私自身も楽しみにしている。

(いけがみ・つかさ/西宮市大谷記念美術館学芸員)