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30th - Miracle vol.1 /
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キュレーション:菅谷富夫 (大阪中之島美術館準備室 室長)

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・オープニング・ミニライブ 2019.7.20 sat, 19:00 - (予定) 無料
  演奏:sara (.es ドットエス / piano)

サロン・ド・ノマル:ゲスト在廊カレンダー
2019.8.26 mon - 9.14 sat
30th - Miracle vol.2 / On the Wall
キュレーション:菅谷富夫 (大阪中之島美術館準備室 室長)

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  2019.8.24 sat, 18:00 - (予定) *招待制
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2019.9.21 sat - 10.19 sat
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植松奎二 Keiji Uematsu:未来を振り返る−仮説


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・オープニング・パーティー 2019.12.14 sat, 17:30 - (予定) 無料
1989年、Nomart(ノマル)誕生
人はアートがなくても生きられるが、活きるためにはアートが必要である。

ノマル・ディレクター 林 聡


リズムとか周期というものは面白い。Nomart(ノマル)は平成元年の1989年、私が25歳のとき誕生しました。
Nomade(遊牧民)+Artの造語ーそれがノマルの語源です。決まった形をとらずに、根っこは張り巡らしても定住せずにあらゆることにチャレンジしていくという姿勢を表したものです。

 そのノマルが、2019年に30周年を迎えました。

80年代後半、教育大学で美術を専攻していた私は、大阪の国立国際美術館で開催された「現代アメリカ版画の断面・作家と工房」展を見て、出版と制作が一体化した欧米型の版画工房を日本で作りたいという志を抱きました。卒業間もない1989年、賛同者を得て大阪城の東に位置する城東区で誕生したのが「版画工房ノマルエディション」です。アーティストと作品、作品と社会、様々な関係性の中で、工房がひとつのメディアとしていかに機能するかという新しい可能性の模索、そこから始まりました。

版画工房としてスタートしたちょうど5年目の1994年に、工房の2階でデザイン編集セクションを設立。いち早くデジタル環境を整備し、作品制作や情報管理、出版物等にデジタル技術を積極的に生かしていきました。
さらに5年後の1999年、工房の倉庫を改築して展示スペース「ノマルエディション / プロジェクト・スペース」を新設。版画の枠を越えた実験的なプロジェクトや展覧会を開催していきました。2002年、隣接する工場が空いたことから間の壁を開放してギャラリースペースを拡張。ホワイトキューブと大きな木造のスペース、二つをあわせて「ノマル・プロジェクトスペース cube &loft」と改名しました。立体、平面、映像、様々なメディアを駆使するアーティストたちと共に新たな作品を次々に生み出し、そして現在の「ギャラリーノマル」へと繋がっていきます。

創立から20年目となる2009年、オフィスとギャラリーを大規模改築。より自由度が高く、大型作品のインスタレーションも可能となった新空間は美術作家達を刺激するばかりでなく、7mの勾配天井と厚い壁がもたらすナチュラルエコーによって前衛音楽家達を呼び寄せる音響空間としても機能し始めました。特に立体作家や音楽家はその空間から触発されるものがあると感じています。

設立当初から30年を共にしたアーティストもいれば、 学生のころにその才能を見い出し、今では世界中を飛び回って活躍しているアーティストもいます。そしてこれから活躍していくアーティストたちもいます。有望な音楽ユニットもいます。ノマルが生み出すものを理解して、支え続けていただいたコレクターの方々、販売を担っていただいたディストリビューターの方々、メディアの方々、ノマルのアーティストに新たな場と機会を与えていただいたキュレーターの方々、そしてスタッフ、それ以外にも多くの方々の力で今のノマルがあります。創る力はエンドレスでも、続けるにはとてつもないエネルギーと工夫と、そして多くの人たちの力が必要でした。

30年を振り返ります。数々の失敗や、無理もありました。寝食も忘れて没頭し、倒れた経験も。多くの反省と共にやはり思うことは、それでも、どんなことでも必ず実現する、という信念です。
私は、美術を信じます。そして音楽を、アートの全てを。その思いのまま迎えた30周年を機に、この文章を綴ることにしました。
私の個人史ということではなく、30年の間に関わった実に多くの人々との関わりと、そこから生まれた考えをまとめてみようと思ったのです。

ノマルが誕生した1989年は、現代美術におけるターニング・ポイントだとされています。またノマルの30年間は、日本経済において“失われた30年”と言われる年代とも重なります。アートを取り巻く環境も社会情勢も大きく変わり、アーティストたちも翻弄されていくこととなりますが、私自身は、ノマルは、時代や環境に翻弄されないアートの根っこをずっと見続けてきたように思います。それは企業としては非常にまずい選択だったかもしれませんが、それでも何とか続けることが出来たのです。

関わってきたアーティストたちは、紹介だったり本人からのプレゼンテーションだったり、たまたま遭遇した作品に魅せられたりとその出会いは実に様々ですが、私自身の興味は、彼らの思考にあります。思考の波長が合う、という出会いがあるのです。
思考を感じさせる作品を目にすると、一緒に次を生み出したい、新しい展開を創っていきたいという気持ちにかられます。 ギャラリーを運営する以上、もちろん文脈やマーケットと無縁ではいられませんが、目の前にいる彼らー有名無名に関わらず孤独に闘っているアーティストたちにとって最も近い存在であり、彼らと共にその道の先を創る存在でいたいーこれが、工房という生み出す場からスタートしたギャラリーノマルの特徴だと言えるでしょう。

30年の間に版画工房、デザインオフィス、ギャラリーとそれぞれの機能を持った空間がどんどん増殖していきました。全世界がインターネットで繋がり、端末があればどこでもアクセスが可能。物や場、人さえもいかに抱えないかが競い合われる現代の視点からすれば、ノマルはリスクの塊かもしれません。それが時代遅れかといえばそうでもなく、仮想世界への疲弊が訪れるであろう少し先の時代において、機能を超えた、心的な“拠り所”としての役割がますます求められていくのではないかと考えています。

ノマルの30年間、大きなうねりが一区切りをつけます。次の周期も変わらず進んでいくことと思います。何ものにもとらわれず自由に、どこにでもー創立の1989年から今も変わりません。