それまで、"seed on the table" というシリーズでキャンバスの上にドットを付けた小さなドローイングを制作していました。薄い穴の開いた鉄板にろうそくの煤を落とし込みフラットな面を再確認するような仕事です。絵画というものが描かれた後のキャンバスの、絵画としての意味がなくなるまで絵の具を剥ぎ、限り無くもとのキャンバス(白い平面)の状態にまで還元することで、同時にそのもの自体が物であるということの確認をすること、その作業を経てドットを転写するという私自身の平面的なものを意識したアプローチを配することによって、地も図もないようなあるいは何でもないような薄っぺらなものとして(トランプのような)成り立たせることに興味を持ってくり返し制作していました。
ただこの仕事は何でもないようなところを目掛けてのミニマルなドローイングなだけに、どこかで同じような単純な成り立ちで、平面としても同じような見え方のする、しかし私自身のものごとの捕らえ方、考え方といったものを含んだものへの憧れ、あるいは欲求というものがあったわけです。