Period 1: Pencil / Frosted Glass

木村 秀樹
Hideki Kimura

2015.8.22(sat) - 2015.9.5(sat)
13:00 - 19:00 日曜・祝日休廊
Closed on Sunday and National Holiday





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○Opening Talk: 2015.8.22 sat 18:00 -
   Talk: 木村秀樹 x 中谷至宏氏(美術館学芸員)

○Opening Party: 2015.8.22 sat 19:00 -

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木村秀樹-70年代の鮮烈なデビューから現在・未来に至る仕事。 現代版画を“超俯瞰”する計7回、4年間にわたるプロジェクト、 “Hideki Kimura: Project Periods 2015-2018”

20代の頃から国際的な版画展に出品し多くの賞を受賞、国際的にも高い評価を獲得。長年に渡り第一線で活躍を続けている日本を代表する画家/版画家、木村秀樹。特に70−80年代に制作された作品群は国内の主要美術館に収蔵されており、ご覧になられた方も多いと思います。

  ギャラリーノマルで昨年より始まった、木村秀樹の70年代から現在に至る仕事を、4年間計7回の会期(Period)で開催するプロジェクト、"Project Periods"。
このプロジェクトは、時代を越えてなお色褪せることのない魅力を放ち続ける70年代初期の作品から最新作までを、系統立て俯瞰的にご覧いただくことで、木村の思索の遍歴をたどり、その魅力に迫る試みとなります。


毎回、版画の新たな可能性を提示する新作を発表!
今回のプロジェクトでは、作品全体の中から10のシリーズを選び、当時と同様ないしは類似のポジ/版を用いて、木村の現在の視点からの新作シルクスクリーン作品を各ピリオドごとに制作、旧作と併せて展示します。10枚の新作版画作品は、会期の終了時(2018年を予定)、1冊のポートフォリオとして出版いたします。

なお、今回のプロジェクトでは、木村を古くから知る京都市美術館学芸員、中谷至宏氏に4年間、各回でナビケートをご担当いただき、客観的な視点からも木村の仕事の本質を探ります。


Period 1: Pencil / Frosted Glass
Period 1でのテーマは、<Pencil / Frosted Glass>。いずれも70年代の木村作品を知る上で最重要となるシルクスクリーン作品のシリーズです。上記作品の中より、今展ではさらに特徴的な作品を厳選して展示。また、当時の版を用いて新たな作品制作を行います。 図版では広く知られている作品ですが、ぜひ今展で現物をご覧いただき、直にその魅力をご体験ください!



作家コメント

 1972年から現在に至る制作の展開を、7回の展覧会を通じて紹介します。私のこれまでの制作は、いくつかのシリーズの連続体/集合体と見なす事ができるかもしれません。"Periods" は、それ等のシリーズを、時系列に則して、合理的/回顧的に紹介する事を目指しますが、その事は逆に、各シリーズ間に、技法的、素材的、内容的、時間的な、浸潤、交錯、反復といった、分節化不可能性を再認識させる事になると想像しています。制作遍歴の中に、別の違和を発見し、新たな展開に繋げる事、これが "Periods" に託した木村の課題です。

第3回 Periods は「 Fragmentsー断片」をキーワードとし、1984年~1988年に制作した作品と新作シルクスクリーンを併せて展示します。
断片とは、日常的な(通常の)関係から、ランダムに切り離された、事物あるいはイメージを指します。
孤立化させられたイメージが持つ強靱性と浮遊性を、写真製版のシルクスクリーン技術に内包された、レイヤーと言う相対化システムを通じて、培養する事あるいは解放する事の可能性を探っていた時期の作品群です。
ディペイズマンでもなくアッサンブラージュでもない、別の構築原理を探っていたのかも知れません。


木村秀樹 Hideki Kimura



「新測定」 中谷至宏

自ら制作した過去の作品を自身の手で再制作すること。美術においては、オリジナリティーを保証するため、原則として原作が滅失した場合に限られ、また時間の隔たりによって、もとより素材も制作者の目と手も同一ではありえないにもかかわらず、可能な限り原作との同一性を求めて忠実な再現が目指されてきた。
だが唯一なオブジェクトのみに作品の固有性を見定めようとする近代的な作品概念に対し、近年の作品概念の多様化によって、作品の構成要素となるオブジェクトの固有性は担保しながらも、発表の度ごとに新たな作品として提示され、受け止められるような事態が常識化してきた。ここでは原作と再制作という対置は無効となり、場所や機会が異なれば、構成要素が同一であっても常に新作と呼ぶことに違和感がなくなってきたようである。オブジェクトとしての固有性よりも発表という振る舞いに作品の同一性を求めるという方向性は、作品に要素として身体表現が含まれているか否かを別にして、限りなく作品発表をパフォーマンスとして認識することにつながっている。

言うまでもなく新作の発表は、作者のディレクションが可能なこと、つまり作者が現役であることが必須である。木村秀樹はまさに現役の作家として、新たな振る舞いを開始した。しかしそれは、新たな状況下で提示することによる新作ではなく、過去の自作の再制作を伴った新作の追及である。手元に残されていたフィルムをもとに、再現あるいはリミックスを基盤としつつ新たな布置と改変を施した再編集を試みる。この振る舞いを可能にしたのは版画というメディアの特性に違いないが、同時に方眼紙に刷られたPencilのシリーズが象徴するように、木村のイメージに対するアプローチに一貫する、距離の測定/再測定という態度が導いたもののようにも思える。

木村の自作の新作化は、過去を現在に引き寄せるというベクトルに留まらない。タイトルに’Periods’ と付けられているように、過去の時間に特定の区切りを設定して、むしろ現在をそれぞれのPeriodに投げ返すことを通して、自らの位置を再測定しようとしているかのようでもある。以後3年に亘る木村秀樹の新たな振る舞いに目が離せない。


プロジェクトナビゲーター:中谷至宏(京都市美術館 学芸員)
1987年より京都市美術館と二条城に学芸員として勤務。専門は近現代美術史、美術館論、美術館史。「Parasophia: 京都国際現代芸術祭2015」キュレーター。1989年、「版から/版へ -京都1989-」展を企画し、木村秀樹をはじめとする17名の版表現を展示。