Gather - Gift

今村 源, 稲垣 元則, 田中 朝子
Hajime Imamura, Motonori Inagaki, Asako Tanaka

2019.2.16(sat) - 2019.3.16(sat)
13:00 - 19:00 日曜・祝日休廊
Closed on Sunday and National Holiday





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[キュレーション:三脇康生 Yasuo Miwaki (精神科医 / 美術批評家)]

○ 展覧会初日 参加メンバーによる座談会:2019.2.16 sat, 17:30 - 無料
  登壇:稲垣元則, 今村源, 田中朝子+林聡 (ギャラリー・ディレクター)
  * 終了後、オープニング・パーティーを開催

○ 最終日 関連イベント:音楽Live「漏れる、音」
  2019.3.16 sat open 19:00 / start 19:30 - , 料金:前売 1,500円 / 当日 2,000円
  Sound:.es (ドットエス: 橋本孝之 & sara)

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贈り、贈られた“Gift”から滲み出る漏れ ー Gather展、第2弾

2017年7月、精神科医/美術批評家の三脇康生によるキュレーションで、美術作家の中川佳宣、髙橋耕平が参加してノマルで開催した展覧会「Gather - 群れ」。同展では“作品を作ること/見ること”を等価に捉える中川の姿勢とそのアトリエに着目。ドキュメンタリーの手法を用いながら自己の表現を開拓する髙橋が、中川と三脇の対話を映像作品として撮影。またアトリエ取材時に入手した素材と写真による作品を制作。同展の為に制作された中川の作品と共に発表・展示されました。それは“群れの中にいる自分ではなく、自分の中の群れを示す”試みとなりました。

2度目の開催となる今回のGather展では、三脇がある共通の特徴を見出した3人の美術作家(稲垣元則、今村源、田中朝子)を選出。異なるアプローチから独自の世界観を提示する3者と三脇が、各々に任意の「贈り物」を贈るところから企画がスタートしました。受け取った側はその「贈り物」を起点として作品を制作する、という決め事の上で、数ヶ月に渡りグループメール上で4者+ノマルによる対話を繰り返し、手探りの中から今展でのテーマを深めていきました。展覧会では、その時の「贈り物」と共に新作の数々を一堂に展示いたしました。

今展も前回と同様、テーマを掘り下げたコンセプトブックを出版。またオープン初日には参加者とギャラリー・ディレクターによる座談会を、さらに最終日には三脇からのお題「漏れる音」をテーマとした、.es(ドットエス)による音楽ライブを開催。一癖も二癖もあるメンバーが集って行われる意欲的な企画展となります。

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三脇康生 コメント

今回の展覧会の切っ掛けになった、それぞれの参加者からのそれぞれの参加者への贈り物(Gift)は、展覧会の企画を意識して贈り合っている。だから、もちろんどうしても、贈られた人が引っかかりそうな物を意図的に送り合っている。それでもそこで、贈られた方は、もう忘れていた記憶を完全に思い出したり、そういえば何時もそんなことを感じていたと判明させられる気になることもあるし、やっと気づいたと思うこともあるだろう。つまり、新しい思い出なのか、古い記憶なのか、新たに考えているのか、よく分からないのだ。ここから、思い出と記憶が分岐して、その差異が反復される様子に晒されることになる。例えて言うと、引越しをするとき、たまたま荷物の下に見つけた古い新聞紙に読み耽り、全く記憶がなかったり、うっすら記憶があったり、案外にも今まさにしている仕事と奇妙に連結したり、あるいは、しっかり記憶があったりする。そういう経験があるとして、それをこのGiftという行為が再現し増幅していないだろうか。もしかして、このような新聞紙に当たるものを贈れないかなと始まったのが、今回のGiftである。各参加者の、生活の中の、制作の中の、研究の中の、あれ?!っと思うような漏れに当たるものを、なんとか贈れないかなというのが、今回の贈り物である。それが、うまくいくかどうかは、分からない。兎にも角にも、Giftは贈られた人の漏れを引き起こす手段の一つである。そこから作品を創り始める。ところで、贈った者にも、その作為の陰に漏れ聞こえる声があることを自分で探っていくのが課せられた作業にもなるだろう。何を贈ったのか、再度、確認することを要請させられるのだ。贈られた者の反応から、何を自分が贈ろうとしたか、自問させられることになるのは当然だろう。Giftを贈った者が、まるで、水の中に瓶を放るように、多分、贈り先に何か関係あるかなと思い送ったものが、辿り着けども予想とは違った風に、贈られた者に漏れを生じさせるが、今度はその逆のことが行われるから、相互に贈り主の意図に反して、漏れが発生する。贈られたものを受け取った時に発生する漏れもあれば、贈ってみてなにか奇妙に漏れることもある。それら二つが、反応することで、時には群れが、もくもくと作られることもある。前回の展覧会gather -群れ-の時に、自分の中の群れと呼んだものを想起して欲しい。今回、試みたような諸々の漏れが、雲のように群れを作れば、その時、自分というものも逆に諸々の漏れと群れの間の平衡状態として成立してくるのだ。だから、自分の中の群れの、自分とは、もろもろの漏れと群れの干渉地である。漏れと群れの拮抗を体現している、そんな展覧会にしたい。それができる作家を呼び集めてみた。よってこれはgather2である。

三脇康生 Yasuo Miwaki
1963年生まれ。精神科医 / 美術批評家。京都大学文学部(美学美術史専攻)、京都大学医学部、卒業。フランス政府給費留学生としてパリ第一大学科学哲学科博士課程留学後、京都大学大学院医学研究博士課程修了(医学博士)。現在、仁愛大学大学院(心理学専攻)教授。
主な著書:
「心の探求者としてのパウル・クレー」 (共著/慶応大学出版会)、「アートXセラピー潮流」 (共著/フィルムアート社)、「ナルシシスムを静かに破壊せよ」 (ノマルエディション)、『医療環境を変える-- 「制度を使った精神療法」の実践と思想』(共編著/京都大学学術出版会)、『ドゥルーズ/ガタリの現在』(共著/平凡社)