ギャラリーノマルでの名和晃平個展「Element - Black」(2018.11.10 - 12.8)にて発表したシルクスクリーンシリーズ "Element - Black"、全9種類。
一見すると黒~グレーに見える画面の奥底から、光の反射によって抽象的な像と多様な色が立ち現れる印象的な作品となっています。
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【 Element - Black シリーズについて / 林聡 (ノマル ディレクター) 】
2001年の版画シリーズは、髪の毛やスナックのチップスのかけらから作ったレイヤーの集積によって生まれる過剰さへの試みであった。そして、2002年の版画作品シリーズElementは、描画の材料や方法を変え、ある構造の要素(テクスチャ、フォーム、フラグメント、アーキテクチャ)としてのドローイングをシルクスクリーンの版に置き換えたシリーズであり、名和は、そのミクロ的なアプローチで近年、多くのドローイングを制作している。それらのエレメントを拡大すること(版を利用することで可能になった顕微鏡をのぞくような行為)や、それらのエレメントが重なり合うことによって生まれた平面作品は、消失の象徴としての黒に還る。産まれ、消え、再生し続ける細胞(泡)のように。今作”Element-Black"はそれらの流れを組みながら、新しい”Black”という概念を取り入れた。黒の下地とそこに刷り重ねられたインクのレイヤーが様々な光の反射率を生み出し、イメージは、全てを吸収する黒の中に残るかすかな反射である。見る位置によって変容する様ー黒の物体でしかなかったモノリスに接近するとそこは宇宙であったように。
エレメントが集まって生まれる黒は、無であり無限でもある。