2020年、世界中がCOVID-19という共通の災禍に見舞われました。
世界各国でのプロジェクトや展覧会は全て延期となった大岩オスカールは、
マンハッタンのマンションに籠ったままでできることを考えました。
「幸い僕は自分が感じたことを作品化できるスキルを神様から授かっている」
隱遁生活の中で彼が綴った空想の旅は「Quarantine Drawing Series」として2020年3月~6月の間に20枚が描かれました。
アーティストの空想の旅を全世界と分かち合う版画シリーズ
縁あって大岩オスカールと知り合ったギャラリーノマルのディレクター林聡は、
この貴重なドローイングを版画作品として出版することを即決。
「Quarantine Drawing Series」はコンピュータを使って描かれたデジタルデータですが、
アーティストの空想の旅を、全世界の人と分かち合う手段としてシルクスクリーンによる版画作品に刻印することにしました。
ノマルでの初個展は新作版画&タブローの展示
サンパウロに生まれ、東京、ニューヨークと移り住みながら創作活動を続ける大岩は、自らの人生を旅に例えています。
複数の文化的視点から生まれた社会風刺と物語性に富んだ作品たちは、世界的に大きな注目を集めてきました。
今展ではこのシリーズの他にも、オリンピックをテーマとしたタブロー作品などの展示も予定しております。
大岩の自由なイマジネーションが描き出した作品の数々、この機会にぜひともご高覧ください。
>> 展覧会詳細
サイズ:57 × 76.5 cm
技法:silkscreen on BFK Rives(1版1色、高濃度の艶消しインクを使用)
エディション:15
販売部数:単品 各7部
20点セット 8部
販売価格:単品 88,000円〜 (税込)
20点セット 1,408,000円 (税込) [展覧会冊子付、特製ケース入]
*価格変動の可能性あり
突然生活が変わった。今までのように地下鉄に乗ったり、スタジオに通ったり、街を歩いたり、映画館で映画を見たり、友人と会ったり出来なくなってしまった。隔離生活の中、外に出るのは食料品の買い出しか、ちょっと空気を吸いに出るだけだ。
進行中のプロジェクトや展覧会は全て、延期された。都市はパンデミックの中核になり、住民は誰でも今まで以上に難しい生活を強いられている。多くの人が職を失い、請求書の支払いが絶望的になっている。世界中どこをみても元気の出るニュースなど見当たらない。多くの国が国境封鎖を行っている。アメリカ大統領の施策は最悪だ。
僕が普段通りのクリエイティブマインドでいられるために何ができるか、それもマンハッタンのマンションに籠ったままでできることを考えた。幸い僕は自分が感じたことを作品化できるスキルを神様から授かっている。この力を使ってドローイングのシリーズを始め、隔離生活の真っ只中の、空想の旅を思いついた。その結果がこの日記風の作品で、過去のこと、現在の生活、そして未来について考えたことを綴っている。
ー 大岩 オスカール Oscar Oiwa
楊浦区、上海
予定では3月中旬に上海に行くはずだった。黄浦川沿いの新しい公園に大きなパブリックアートのインスタレーションをまさに終えようとしているところだった。コロナウィルスの感染は武漢からあっという間に爆発的に中国全土に広がり、残念ながら僕の旅はキャンセルせざるを得なくなった。
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セントラルパーク、ニューヨーク
土曜日の春の天気の良い日だが、観光客もストリートの売店も馬車もいない。静けさの中で唯一動いているのは風に揺れる樹だけ。
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僕の窓からの眺め、ニューヨーク
隔離生活中、人々は長時間コンピュータに向かっている。人々はソーシャルメディアを使って、自宅からの小さなコンサートや料理の技、そして窓からの眺めなどをシェアする。僕の窓は映画館の大きなスクリーンのようだ。この街は悪者とスーパーヒーローの過密都市なので、ここから多くのことが起るのが見える。今夜のお楽しみはB級SF映画の代表作、コジラ対トラントパスの大決戦!
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スタジオに戻る
ニューヨークの歩道を行く人の数は目に見えて増え、通りは賑やかになってきている。店が再開し始めた。感染者数を示す「曲線」は良い方向に向かい、病院は静かに第2 波を待っている。全体的な状況はまだ安全とはほど遠いが、前進して僕も「ビジネスを再開する」ことを決め11週間の隔離生活を終えてスタジオでの活動に戻る。この春は数ヶ月間時間が止まったが、個人的には大きな損失なくこの時期を生き抜くことができて嬉しい。しかし、この記録的な失業率で社会の緊張が高まっていることは明らかで、どんなに小さな火花でも混乱を引き起こす可能性を感じる。未来は予測できないが、第2波は社会的危機になるだろう。危機の理由は、人種問題、右翼運動、政府の腐敗、またはこれまでにすでにエスカレートしている無数の他の問題かもしれない。近い将来はそれほど明るくないが、それは一時的なもので、すぐにより良い日が訪れることを願っている。
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再開
大流行は、2019年12月初旬に武漢の食品卸売市場で始まった。半年後には700万人を超える人が感染し、40万人以上が亡くなった。 恐ろしい、驚くべき数だ。現在、世界中の研究所は効果的なワクチンの開発を急いでいる。この絵では、深海を泳ぐ不可思議な動物がそれぞれ国(中国、米国、ブラジル、ロシア、イギリス、スペイン、イタリア、フランス、インドそして日本)を表し、中央の光は今後開発されるワクチンを象徴している。同時に、動物は宇宙をさまよっている幽霊のようにも見え、地球と呼ばれる小さな惑星の内側を覗き込んでいるようにも見える。 僕が通常の生活、またはどのような形であれ、現在でき得る日常生活を再び始める時がきた。そして、僕はここでこの隔離生活のドローイングシリーズを終了する。
このシリーズを第一線で働いた、または今も働き続けているすべての医療スタッフに捧げる。 ありがとう!