本プロジェクトの最終作品。
チャコールのシリーズ。これは一体どう版画の作品になるのか。

2017.12.26 tue
ポジを持って打ち合わせ。
このシリーズは木炭を撮影した写真イメージを、炭の粉を混ぜたインクでプリントし、その紙を立体に組み上げ一部を焼いて焦がし、また炭に戻す、、、という3重に状況が混じり合うコンセプト。
今回は木炭のイメージの上に水滴のイメージを重ねて別々な存在感が重なり合うような構造にしたいと。
いつもなら、描画用のフィルムに絵の具で水滴を垂らす(描く)が、それではただの水滴の輪郭を持った色面になるだけなので、実際に垂らした水滴に光を当てて撮影したリアルな状態を版表現してみたいとのこと。
デザイナーの笹岡も組み込まれる。
2018.01.06 sat
新年早々、水滴部分の描画、撮影。
その間、木炭のイメージを刷る。普通、印刷用の黒インクにも炭素の顔料が混ざっているが、そこにさらに炭素の粉を増量。
粉っぽくカサッとした感じになるようにしてみる。

撮影された水滴の画像を元に何度もコンピュータ上でシミュレーションを行う。
これ通りになるかどうか、は、やってみないとわからない。
2018.01.24 wed
何度も調整を繰り返す。サンプルと元のデータと刷り上がりを比較すると、どうしてもコントラストが高く黒々とした感じにならない。
オリジナルの画像はないので、手元のものでどうしたらいいかを検討。
下地にベタ版を引いて木炭のイメージを重ねることにする。
濃厚ないい感じに。
2018.02.02 fri
水滴のデータに注文が入る。
ふわっと光るようなイメージを砂目調に表現していたが、ハイライト部分を白くさせるため濃いインクで刷りたいのでどうしても砂目が目立ってくる。両方の間を取れるように調整していたが、階調部分をもっとなくしてほんのかすかに出るくらいまで飛ばしてしまいたいと。
撮影データの明暗を均して、モニタ上で調整。網点に変更。
「何も言ってないけど存在感のある状態が理想」と何度も言っていた。
2018.02.05 mon
最後の展覧会のDMは黒い紙に黒い木炭を刷る、というもの。
木炭を刷って刷りまくる。
2018.02.08 thu
最後の水滴の濃度だけ最終調整。
水滴の水の部分の濡れた感じに今回使ったのはアルキッド系のインク。いつも使っていないが、これまでは光沢と厚みが必要な時はエポキシ樹脂のインクを使うことが多かったが、次に上に刷るまでに硬化時間を待つ必要があり、時間短縮のため比較的セットの早い酸化重合のインクにした。低メッシュでもレベリングがよく、ハンドリングも良いので助かる。
水滴のハイライトアミ版の濃度を数パーセント違いで刻む。濃度の数字と見た感覚に差があるのはよくあることで、様子を見ながら言われた通りにしない場合もある。これぐらいかな、と言いながら数バージョン刷って、この中から校了を選ぶことができた。
 
これで全10点を無事やり遂げたということになる。
最初のペンシルが2015年、そんな前に感じないのが不思議。
全て並べてみるとバリエーション豊かで、この時大変更があったな、とかこれはよく刷れたなど、なかなかに感慨深いが、このプロジェクトによって対応力の引き出しが増えたことは、木村さんに感謝です。
最後のチャコールがいちばんのお気に入り、と木村さん談。
Futureーにつながるのか?
全10点。総合計96版。3年8か月続いたプロジェクト、これにて完了。

おしまい