02 Design = Edit︱“在”を創る
編集&グラフィックデザインは、ノマルが版画工房の次に機能を持ったセクションだ。私自身、大学で写真と版画の勉強をしていたが、専攻はデザインで在学中にデザイン会社でアルバイトをしていたこともある。写植と紙焼き、糊で文字を切り貼りする版下の時代だった。そして長い学生生活を終え、ノマルを立ち上げた。
程なくしてのMacintoshの出現には心が躍ったし着手も早い方だったと思う。今はコンピュータがあれば子どもでもデザインや入稿作業まで出来るし、Webで全てが完結する。商業デザインにおいてはビジュアルの傾向に流行り廃れがあり、何かが流行れば数年間、皆が同じ方向を向いている。またそれを求められもするだろう。だが本当に重要なことは、手作業の昔も、今も、基本的に何も変わっていないと思う。ただコンピュータやインターネットにより、様々なアクセスをすることが手軽に出来るようになったことで、さらに新しい可能性や考え方が生まれていくのだ。
デザインを考える時、“在”を創るというイメージがある。存在という文字の中の“在る”という文字だが、この文字が好きだ。human being─“人が在る”で人間というように、在は存在の根源のようなピュアな状態を指すような気がする。“在”はグラフィックのビジュアルであったり建築であったり、音であったり、美そのものであったりするが、それらをいかに編集して組み立てて完成させていくかということがデザインの本質だと思うからだ。
デザインもアート作品も、音楽の表現も全て基本は変わらない。そこに在るべきもの─創造者にとって在るものを、在るべき姿で表出させるだけだ。“在”は、コンセプトでもある。アウトプットの方法で表現が変わる。
その作業は“在”を理解した上で、様々な要素をいかに編集していくかということだ。余計なものはいらない。“在”は物であったり方法であったり思考であったりする。しかし新しいものを生み出す作業には通じるものがある。いかに“在”を見極めるか、そしていかに純度を高めていくか─。それが、生きることの編集作業でもある。(2019年 林聡)
02 Design = Edit︱“在”を創る