03 Living Art︱共に、創るために
たとえば伝統工芸的な技術と最先端技術、全てが眼前に拡がっていて何にでもアクセスできる時代となった。新旧の価値を認め、様々なフェーズにアクセスし、コネクトすることによって、可能性はさらに拡がっていく。
アートにおける「コラボレーション」という言葉も版画工房を始めた1989年と今とでは、大きく変わっているように感じている。作業場での共同作業だけでなくプロジェクトのプロデューサーとしての役割も担わなければいけない。技術を持つということを超えた、新しい価値観が生まれている。共同制作、共同作業ではなく、アクセス/コネクトする為のプラットホーム創りから始めることが新しいコラボレーション(言い得てはいないが感覚的によりしっくりくる言葉はインタープレイ)だと─。それはこの時代からの、古いもの、新しいもの、小さなもの、大きなもの、遅いもの、早いもの、全てへの接続。同時代を生きているアーティストたちと共に、加速するこの世界の拡がりを見続けていきたい。
この時代を共に生きているから感じるものを共有することが重要で、その昔散々苦労して共に創り出した作品が、技術や素材の進化でいとも簡単に出来るようになっていく。しかし、かつての作品が悪いかというとそうでもないのだ。これがまさに、共に生きるということ、時代の中でのお互いの作用・反作用の繰り返しなのだ。お互いが進化していかなければならない。シリーズで作品を創り始めて、1作目と10作目では随分違うことがある。立ち帰ることもあるが、その10作を創る時間と変化を含めて一つのシリーズにするということもある。新しいことをすれば不備もあり、それを修正して前に進んでいく。同時代に生きているということが重要でそれを貫いてきた。Contemporary Art なのだ。
工房開設から10年後の1999年よりギャラリーを始動、そこで開催してきた多くの展覧会でも、こうした“インタープレイ”によって生まれた作品が次々に発表されていった。作品を創ることと展覧会を創ることは同じ感覚で挑み続けた。
30年を振り返ると出版してきた版画、マルティプル、本、映像、音楽アルバムは1000種以上、企画開催した展覧会は約180回。その時々の、その時にしか出来ない“インタープレイ”の歴史がある。(2019年 林聡)
03 Living Art︱共に、創るために